Impressions-SCREAMIN' JAY HAWKINS

ALBUM NOTES

フランスの「LAST CALL」レーベルに契約後に吹き込んだ第1作。
録音はテネシー州メンフィスの「 Sam Phillips Recording Service*」というスタジオで、1997年の7月に行われました。プロデュースは、Jim Dickinson。
ジャケット・デザインはすべてフランス側の手によるもので、そのせいか、例の「ヘンリー」が見当たらない。
全体にキッチリと作られ(ようとし)ていますが、ギターの扱いなどに、「いかにも」な、白人のブルース・マニアが好みそうな音作りにやや疑問もあります。 とはいえ、SJH のマニアなら、そんなコトより、どんだけ笑かしてくれるか、が大事ですからねえ。「笑いどころ」なら、あいかわらず豊富に用意されてます。
3."Coulda', Woulda', Shoulda'"や、8."I'll be there"あたりがなかなかゲージュツ性も高く(?)よろしいのではないかと。

* ─ この Sam Phillips Recording Service とは、その名前から連想されるとおり、あの「 SUN 」の栄光のスタジオ「そのもの」で、Sam Phillips が 1969年に SUN を Mercury Records の Shelby Singleton に売却していますから、それ以降は彼の手がけている録音は無いのですが、そのスタジオは彼の名を冠してその栄光を現代にまで伝えているようです。


accompanists

Roger Hawkins: drums/ David Hood: bass/ Frank Ash: guitar/ Jim Spake: sax/ East Memphis Slim: keyboards & percussion/ T-Bone Tommy Burroughs: violin/ Sam Shoop: bowed bass/ Bertram Brown: backing vocals/ William Brown & Kelley Hurt: background vocals] (作詞・作曲者の記載なし。14は当然として、4,10,11もヒトの曲か? )


1. Listen

ベースのソロにピアノも絡みはじめ、Jazzyな滑り出し。しかし歌に入るとバックにはサルか、はたまたグレムリン?っちゅー小ウルサイ鳴き声の如きバック・コーラス(とはとても言えないよなあ)集団が。やがてバックはさらに騒がしくなって大団円(?)。
Frank Ashのギターも、こうゆうバッキングだと、それなりにいい味だしてますね。ただ、このハンパな歪み具合は、あまり好きになれないけど。


2. Because of you

スカっぽいカッティングのダブル・シャッフルにのせて変則コード進行( key=C なら、C-G-G-C-C/C7-F-G-C のパターン)のかろやかなナンバー。
混声コーラスはなかなかうまくマッチしてますね。
Frank Ashのギター・ソロは、やや浅い(?)かな。トーン的には、もろレス・ポールっぽい音のような気がしますが、自分じゃ持ってないんで確信が無いですね。レスポールを実際にお使いになっているみなさま、いかがなもんでしょ?


3. Coulda',woulda',shoulda'

「なにをグダグダ言ってやがる!」って良く(でもないけど)言いますよね?その「グダグダ」の、これって「アメリカ版」?って思ったワタシがバカ?
ドラマティックなピアノとともに SJH と女性ヴォーカルの共演(?)でございます。それはそれはメランコリック? なマイナーに乗って二人のミョーな掛け合いは続き、Sam Shoop によるコントラバスのアルコを通奏低音として、T-bone Tommy Burroughs の(知らんなあ・・・ )陰々滅々かつ、嫋々たるヴァイオリンの奏でる、まるであの日本4畳半フォークの金字塔「神田川」の如き、じとじとじっとりムードの中、アホらしいやりとりは際限無く続き、ワケ判んないまま幕を降ろす。
しっかし、どうひいき目に見ても、このギター・ソロ?はヒドいなあ。サックスはまあいいとして。


4. Potluck

ちょっとThere's something wrong with you にも似たイントロ部。
音数を抑えたややヘヴィめ 、のスローなブギなんですが、とーぜん、ここは豚小屋か?っちゅう感じで、どんどんお下品になって行きます。それにしても、Frank Ash のギターときたら、芸が無いなあ。


5. You took me

ピアノのイントロに SJH のややマジな(彼としちゃね) C-Am-F-G 循環プラス C-E7-Am-D7-G7 タイプ(ついでにサビ部分は F-Fm-C-C7-F-Fm-D7-G7 かな?)のソウル・バラードが乗って、なかなかコナレた作りになってます。
ピアノ・ソロはなんとか?それなり、でございます。続く Frank Ash のギター・ソロは、あ、こりゃ間違い無くレスポールだな!ってトーンですねえ。ま、フレーズは可もナシ不可もナシってトコかな?でも同じよーなタイプなら、かっての Wet Willie のギタリスト、リック・ハーシュの方がゼッタイいいよね(って誰に同意を求めてるんだ?)。
混声のバック・コー ラスつき。エンディング近いシャウトのバックのドラムがフザけてていい。そのまま F.O!


6. Deceived

一瞬、ロックンロール?って思わせるピアノで始まるやたら調子いいナンバー。
スカみたいなカッティングのリズム。 これも「C-Am-F-G」タイプの循環コードみたいですね。SJH はノビノビと、っつうか朗々と?歌ってます。
でもなあ、あいかわらず Frank Ash のギター・ソロはいまいちですねえ。すぐあとのサックス・ソロ( Jim Spake )にカンゼンに負けてますよ。


7. Frankly speaking
 
(instrumental ver.)

オープニング&エンディングに SJH のアナウンスメント(「みなさまに Frank Ash によるギター演奏をお届け出来ることを誇りに思います」なんてゆーとこ見ると、Frank Ash の作った曲かも)入りインスト・ナンバーです。 ちょっと Honky Tonk に似てるよーな気がすんだけど。
この曲でも、Frank Ash のギター・ソロってウマいんだかヘタなんだかよく判んないよね。どーヒイキめに見ても Jim Spake のサックスに負けてんじゃん。


8. I'll be there

なんだかナイト・クラブ・チック(注;英語の用法として誤りです)なピアノで始まる、コール・ポーターのビギン・ザ・ビギンを想わせる曲だけど、コード進行はタチが悪い(?)です。予想を裏切る流れで、キーボーダー泣かせですよこりゃ。
キーは「Eb」で、まず、Eb-Fm/E-Eb-Eb のユニットと、Ab-Abm-D-D-Fm-E-E の組み合わせになってます。こりゃあ、ブルース業界(?)ではありえんぞう!(あ、本来ならば E♭と表記すべきなんですが、そこだけ「全角」になっちゃうのがイヤでアルファベット B の小文字 b で代用させていただいてます)
さすが、こんなタイプの曲じゃ、Jim Spake のサックスがメロディアスなオブリで活躍してますね。逆に、ギターはやり辛そう(と少しはカタ持ってやったりなんかして)。


9. I played the fool

ワリとブルースっぽい入り、と思ったのもツカの間、コード進行がちゃいますねえ。トニックとドミナントの繰り返しでレイジーに流れていきます。
ソロのギターはなかなかにメランコリックな(悪く言えば「思わせぶりな」かな?)フレーズの中に消えて行き、それを受けたサックスもちょっぴりおセンチ。
まるでソウル・バラード?「悲しい色やねん」みたい・・・ でもないか?バック・コーラスがあかんねん( ?)。


10. Shut your mouth when you sneeze

なんだかスラブ系のコサック・ダンスみたいなリズムに乗せて「クシャミする時ゃあ 口、閉めろ」言われてもなあ。
珍しく、基本はマイナーの曲です。キーが Am なら、Dm-Am-E7-Am ってヤツ。でも、verse じゃそれが一転して、C-B7-C-B7 のパターンになります。(実際のキーは「Fm」)。
サックスのソロがまた、いい味だしてますねえ。特にブルーノートじゃ収まらないとこがね。


11. Life goes on

重厚なイントロ、そして落ち着いたテンポ。ストレートなブルースが始まりそうなんですが、そう、 SJH。んなワケぁ無いのでございますよ。
キーは Gm です。コード進行は、Gm-C-Gm-D7 を基本として繰り返し、サビではず〜っと C で行って帰るトコで D7 になる、ってゆーありがちなパターン。
バックには全編を通して奇声が散りばめられております。
Frank Ash のギター・ソロは、「しっかりせえよ!」と言いたくなるくらい、ちょっとチープでっせ。
エンド近く、奇声との掛け合いはいつものコトでございますね。


12. You want love

フーチークーチーマン系のリフでミドル・テンポのブギ(といっても Honky Tonk みたいな)やってます。Frank Ash は、やや歪み入ったギターで、なんとか主導権獲ろう(?)とがんばってるけど、全般に Jim Spake のサックスに負けてるよう。
ラストの、SJH(たぶんね。クレジットには East Memphis Slim: kbd.ってのもあるんだけど、どこに参加してんだかイマイチ判んないんですよ)のピアノがどことなくホノボノしてていいですね。


13. Make me happy

バラード・タッチのナンバー。と思わせて突然、コードが滑り落ちる(?)トリッキィな構成になってます。
キーは F で、最初の4小節ではスロー・ブルースにありがちな、2つ目が上がるヤツです。しかし次の 4 小節は Bb-Bb-C-C、とトニックに帰って来ないのです。で、トツゼン Ab に落ちて来て、Ab-G の繰り返しになります。
ミョーにハイ・グレードな混声のコーラスのバッキングが無意味(?)でよろしい。だんだんゴスペルっぽくなってくなあ。
ギター・ソロなんかは、日本人でこんなの弾くヤツいたよーな気がするなあ・・・。
あ、この曲では、East Memphis Slimの弾く(たぶんね)オルガンがハッキリ聞こえてます。ちゃんと居たのね。


14. I shot the sheriff

あまりにも有名なボブ・マーリイの名曲。
プロデューサーの Patrick Mathe は、リキまずに軽く仕上げています(もちろん、SJH を除いてね)。
バックの淡白(過ぎる?)演奏と、SJH の入れ込みようが対照的ですね。
モノマニアックなレゲエ・ファンがこれ聴いたら「クソミソ」に言いそうじゃない?ま、でもなまじもっともらしくやってないだけ、クラプトンよりはいいかも!
バックのコーラス、きっちりシゴトしてます。でも、クドいよーだけど、ギターの Frank Ash 、こゆ曲には向いてないよな。サイド切ってる時はまだいいんだけど 。


15. Cool conversation

まるでクラブにいるみたいなざわめきの中でスローなブルースが始まる・・・ SJH は熱心?に語る語る。それに、いーかげんにあいづちを打つ男。ホントおざなりな返事って、こーゆうのを言うんだな。なんかクラブでよくある光景なんだけど、これってヒョっとして、SJH 版の"Blues power"かも(え?違い過ぎる?・・・ですねえ)。
ピアノは SJH 自身で弾いてるんでしょね。そこそこいい味、出してますよ。にしても長い!


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